中華楼の正統風水

こんにちは、中華楼四代目素久の妻、アキです。

 

前回の原稿に中華楼の内装は中国伝統的な正統派風水を取り入れていると書きました。今回はこれについて少し説明いたします。

 

私はここに嫁いで5年経ちました。まだまだ未熟ですが、日々勉強させていただいています。日頃ご愛顧をいただいている中華楼は、今年無事に90周年を迎えることができました。25年前に自社ビルを建築しました。そもそも風水の良い土地に店を構えたため90年間繁盛してきたわけですが、新しくビルを建て、1階部分を中華楼とするにあたり、内装に風水を取り入れ、安定的に成長できるように工夫いたしました。

 

風水と言うと、胡散臭いと思われるかたがいますが、皆さん、ちょっぴりお付き合いくださいね。「風水」は「占い」とよく誤解されますけど、「風水」と「占い」はまったく違うんです。風水とは、数千年の間じっくり蓄積されてきた「統計学」「データ学」なのです。どのように何を配置するとどんなことが起きやすいのか、そんなことを統計的に知るための学問です。

 

店内の風水について説明させていただきます。

 

1・店の回りをグルッと囲んでいる帯状のものは一つのドラゴンボール(龍珠)を2匹の龍が追いかける構図の「向かい龍」となっています。これにより龍のエネルギーで店を包み込み、邪気が入り込まないように店舗の包含力を高めました。

 

2・店舗入り口の両脇には高さ1.5メートルもある2匹の獅子が、店に悪い気が入らないよう、また良い気が活性化するように置かれています。

 

3.入り口の近くに龍を呼び込むように新鮮な水が「春雷驚龍鍋(チュンレイチンロングオ)」という鍋にいつでも用意されています。これがいったい何か、気になさるお客さんがたくさんいらっしゃいます。この鍋に新鮮な水をいれ、両手で取っ手を擦ると、にわかに中の水が騒ぎだし、龍の鳴く声が聞こえ、水しぶきが上がり始めます。天から龍が舞い降りたり、また天に向けて舞い上がるとき、新鮮な水を用意してあるこの鍋から出入りして、水しぶきが上がると言われています。

 

4・入り口すぐ右側の台「招財龍穴水盤」という噴水装置が設置されています。強力な循環ポンプの力で石(吉祥石球)を浮上させ回転させます。中華楼では天然のレインボー水晶(七彩水晶)を置いています。気になるお客様はよく触ったりなさっていますね。新鮮な水を入り口付近で循環させることで、さまざまな幸運を導いてくれる龍が、天から飛び降りて、ここにも龍穴を作り出し、人脈や財を運び込んで来るのです。

 

5.最後に、皆さん一番お馴染みの、天井の中心に彫り込んである龍ですが、この店のすべてを活気づけてくれています。陰の気を押さえ込み、お客さまとスタッフの気を調整してくれていて、知らず知らずのうちに「活気ある龍の良い気」を感じながらお食事を楽しむことができるのです。

 

ほかにも詳しい説明がこちらの「中国風水」のページに書いてあります。興味のある方は読んでください。そのページの一番下には風水グッズや中国建材、店舗設計を手がけている中國屋ホームページにリンクされたバナーがあります。

 

ところで、中華楼創業90周年に因んで、イベントを計画しているところです。詳細が決まり次第またお知らせしますね。第一弾は今月から始まる「九龍菜」です。メニュー欄をご覧くださいね。また、今日から、今年の暑さを吹き飛ばす中華楼特製の冷やし中華『 涼麺 』がスタートしました。中華楼の風物詩ですね。ぜひ楽しんでください。

 

 

 

中国研修で発見したナツメ

こんにちは。中華楼4代目素久です。

 

先日友人たちと同窓会で、横浜中華街に出かけ、食事を思いっきり楽しみました。全員で円卓3台を使用して、たくさんの料理を並べ、紹興酒・白酒などの中国酒もたくさんいただき、新たな味の発見や中華の美味しさをしみじみと感じました。その帰りの電車で、ふと思い出したことがあります。それは中華楼のスタッフ全員で中国に赴き、本場中国の料理を研究した研修です。

 

中華楼ではこの研修を定期的におこないます。広州をはじめ、北京や西安にも行きました。実際に老舗中華料理店の厨房に入り、料理技術はもちろん、味付けや調理過程、盛り付けなど、中華料理店のすべてを支配人や調理長からじきじきに学びます。

 

さらに特徴的なのは、みんなで食事をすることです。それはただの食事ではありません。本場中国に来ていますので、事前に調査した有名店や人気店、老舗に入ります。そこで、味の研究をしたい料理をすべて注文します。それこそ全員でも食べきれない量になってしまいます。(結局、なんだかんだで、みんな中華が大好きなので食べてしまいますが。。)

 

朝ごはんはお粥や麺など軽いものにするので、このように大量に食べるのは1日に2回。研修中には最低でもそのような食事を10食以上食べます。その時の料理数は約200皿。(みんな鉄の胃袋をもってますね。。)この200皿にもおよぶ料理の味や、厨房での経験をいつもの中華楼に持ってきて、皆様のお口に合うよう、さらに研究を重ね、いつもの中華楼のメニューや月のオススメに加えます。中華の魅力はいろんな味を楽しめるということ。もちろん少ない人数よりは多い人数でいただくほうが、いろんな味を堪能できるというのも中華の魅力。食べ切れなければ、お持ち帰りも出来ちゃいます。

 

研修で北京に行ったとき、いい食材を求めて食のプロが集まる市場に行きました。ものすごい熱気の中、色鮮やかな食材や香りの高い食材を試食しながら、とてもおいしいナツメを見つけました。みんなでおいしいと喜んでいたら、そこにいた店員さんが「その味がわかるなら、ナツメ専門の店に行くといい」と、少し離れたところにある専門店を紹介してくれました。そこにいくとさらにビックリ、本当のナツメはこうなのかと、目から、いや舌からウロコが何枚も落ちました。それは新疆ウイグル自治区で栽培され乾燥されたナツメで、甘さと香りと肉厚感がまったく別の次元なのです。普通のナツメの歯ごたえが「昔の安い学食の焼肉」としたら、そこで食べたナツメは「現代の高級フレンチのフィレステーキ」ぐらい違うのです。

 

そのナツメはとても特別なので、いまちょうど春の宴席プランの5000円のコースに出てくる杏仁豆腐に使用しています。こちらにその写真があります。遠くにおいてある杏仁豆腐にちょこっと載っているのがそのナツメです。ぜひお試し下さい。
http://chukarou.com/wp/menu/course

 

今月もスタッフ達が精魂込めて仕上げた新しいオススメ料理が登場しています。中華楼に来られたときに、いままで見たことも聞いたこともない料理がありましたら、まず注文してみてくださいね。それは研修旅行とスタッフ達の日々の努力の賜物なんです。

 

 

 

美味しさと生き生きさ~ハートが開く花茶

こんにちは、中華楼四代目素久の妻、アキです。

 

春がだんだん近づいてきて、大分暖かくなりましたね。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。今年は例年より桜の開花が早かったので、先日家族で花見をしました。日向ぼっこしながら、花見ができてとても気持ちよかった。毎年桜を眺めるのに、どうして飽きずにそのたびに美しいなと思ってしまうのでしょう。春になると桜の命が芽吹く、その生き生きした雰囲気に秘密があるのかもしれません。

 

料理の難しさのひとつに、美味しさと同時に生き生きとした雰囲気をどう込めるのかがあります。料理人は同じ味を作り続けます。それだけでも難しいのですが、それと同時に生き生きとした雰囲気をどの料理にも込めなければなりません。それはただ単に同じ量の材料と同じ量の調味料を、同じタイミングに入れるだけではできません。それはどれほど凄いことかと思います。スタッフの皆さんにいつもおいしいことと、生き生きさがどのように両立するのかを聞きました。

 

すると麺点師の茂木さんが言いました、普通、ひとつの料理を美味しくするというのは、人それぞれ。食べるほうもその日の体調による。作るほうも同じ。作るたびに料理の熱さや香りの立ち方に気を配りながら、そのときその場の最善を尽くすしかない。

 

料理長の岩井さんが言いました、生き生きさというものは料理への信念によって生まれてくるものだと思う。料理人の頭の中に理想的な完成された料理のイメージがあって、それにきちんと合っているかどうか。生き生きさが失われた料理というのは、そのビジョンから何かが欠けているからそうなるんだと思う。

 

副調理の富田さんは、朝のスタートから、仕込みから、一日の作業がスムーズに行くかどうかセッティング次第だと思うと言いました。その流れに乗ると、うまく行っている感じになる。もしかしたら自己満足かもしれないけど、それにうまく乗れているときは、料理の色、味、バランスなんかがうまく行き、おいしい料理ができて、生き生きさも生まれる。そのリズムに乗るために準備のときから完璧にやることが一番だと思う。

 

主人の素久は、どんな種類のお店でも、お客様がご来店いただくときよりも、出て行くときの方が明るい顔をしているように、陽のエネルギーで接するのが一番大事だといいました。中華楼も雰囲気を含めて楽しい陽のエネルギーに満ちた伝統中華を食べていただき、お店を出るときにはお客様がいい笑顔になっていることを常に目指さなければならない。だから毎日続けるというのは、ただ繰り返すルーチンの意味じゃなくて、毎日同じ陽のエネルギーに満ちたいいテンションを持っていることが大切。中華楼にはもう一つ、お客様が気持ちよくお食事をしていただけるように、伝統的な風水で環境を完璧に整えていることも、他のお店にない最高の環境を提供するための工夫。これらの相乗効果が生まれるように、スタッフは気を配るべき。

 

主人の言葉を聞いて、確かにそうだねと思いました。風水という言葉が話に出ましたけど、皆さんご存知のように中華楼の内装も中国の伝統的な正統派風水を取り入れています。気の流れのバランスがとれて、お客様がより落ち着いて、美味しくお食事できるような環境を心がけています。次回はそれについて書くつもりです。

 

ところで、以前人気のあった花茶の販売を4月から再開することにしました。今回の花茶は以前のものよりさらにグレードアップされ、お花を包んだお茶をジャスミン茶で作ってもらいました。ここでご紹介しますね。

 

 

これがパッケージされた状態です。小さいのでハンドバッグやポーチに入ります。

 

 

パッケージから出すと、実はこの花茶、ハートの形をしています。ほらなんかワクワクするでしょう。この花茶にお湯を注ぐと、ハートが開いていくんですよ。

 

できあがりはご自分でやってみてください。パッケージにあるようにお花がふたつ出てきます。うまく開くかどうかで恋占いとかできるかも。はずれはほとんどなしね。必ず開くから。(笑)

 

お湯は絶対沸騰したばかりのアッツアッツを入れて下さい。ぬるいお湯だと開くのに時間がかかります。目に楽しく、鼻に優しく、口においしい花茶をぜひご賞味下さい。

 

 

中華楼自家製麺の秘密

こんにちは。4代目の素久です。

 

今日は前回書き切ることのできなかった、中華楼の歴史を支えてきた麺の秘密について書いていこうと思います。

 

中華楼の麺は自家製麺です。ホームページにも書いていますが、2代目にあたる祖父の勝康がモンゴルのかん水を入手し、小麦粉と水、寝かす時間を研究し、現在使用している麺の基礎を作りました。

 

麺は小麦デンプンとグルテンでできています。グルテンは時間が与えられれば与えられるほど繊維質になっていくんです。その結果、熟成によって麺が縮まってきます。

 

麺は内側と外側の水分のアンバランスでシコッとする。噛んだとき、はじめはやわらかく、芯の部分で少し硬いとシコッと感じる。ところが外側の水分が中まで浸透すると安定した水分になってしまって、歯ごたえに変化がないから麺が伸びちゃった感じがする。だから水分は内と外とでアンバランスのときがおいしいんです。

 

麺には水の量が多い麺と少ない麺があります。小麦には水が一番の調味料ですから、水が多ければ多いほど小麦がおいしさを主張します。だから水の量が多い麺のほうがおいしくなります。でもそういう麺には欠点があって、すぐに伸びてしまうんです。

 

中華楼の麺は出来立てのおいしさを優先させています。だから水の量が多い麺を使っています。麺の水分量のバランスが変わっていくので、中華楼でおそばを注文されたら、すぐに食べ始めてくださいね。

 

ちなみに麺が伸びるということは、周りにある水分と麺の中の水分が安定するということ。つまりは麺の中にスープがしみこむことを言います。

 

通常のスープのおそばだと麺の歯ごたえがなくなってしまうのですが、中華楼のアンカケ焼きそばに関しては、時間が経つと(といっても数時間)、また別のおいしさが出てくるんですよ。もし体感されたいとあれば、ぜひアンカケ焼きそばをお土産でお持ちください。次の日の朝、全く違うおいしさを実感できるはずです。

 

この製法を守り発展させ、添加物を一切入れない現在の自家製麺が存在します。
毎日食べて健康になる、そんな料理の基礎ができあがりました。これからもさらに研鑽を重ね、皆様に喜んで来ていただける中華楼であり続けるよう、がんばります。

千日紅の花茶

こんにちは、初めまして、中華楼四代目素久の妻、アキです。いつも平日のランチタイムにお手伝いさせていただいています。

 

先日のミーティングにも参加させていただきまして、中華楼の喜びなどについて、スタッフの皆さんがリアルな感情でいろいろな意見を交わし、たいへん話が盛り上がりました。中華楼では夜に出すお茶を金木犀(キンモクセイ)のお茶にしています。ジャスミンのお茶より少し高級なんですけど、それがおいしいので飲むのが楽しみという話から、新たな企画が生まれました。それは千日紅という花のお茶を期間限定で発売する企画です。皆さん、千日紅の花茶をご存じですか? 大粒の花茶にお湯を注ぐと、お茶葉がパッと開いて、綺麗なお花の形になるのです。香りも程よく、とても飲みやすく、現地では男女問わず人気あるお茶の一つです。興味のある方はぜひお試しください。

 

お茶と言えば、実は私は中国福建省出身で、そこはお茶の産地としても有名です。主人の素久も何度か訪れたことがあって、お茶にすごく興味を持つことになりました。日頃から、ふたりで中国茶を飲んでいます。国際結婚のため、実家でも結婚式をあげたので、主人の親族のみなさんも駆けつけてくれました。滞在中に、みんなで一日だけ安渓(アンシー)という町を訪れ、お茶摘み体験をしました。安渓は福建省の南に位置し、母の実家でもあります。町自体は山々に囲まれ、空気は澄んで、気持ちがいい場所です。町の中心から車を走らせて30分、目に入るのは棚田や段々畑のように広がるお茶畑です。親戚の紹介で特別にお茶畑へ案内してもらい、お茶の制作工房も見学できました。摘みたてのお茶の葉がいくつもの工程を経て、ようやく人々に口に運ばれます。あの丁寧な作業を見たからでしょうか、お茶を飲む度にとても美味しく感じます。

 

千日紅の花茶販売については、詳細が決まりましたらここで紹介させていただきます。目に美しく、香りも典雅で、味も素晴らしいので、ぜひ一度飲んでみてください。きっと私たちのように大好きになると思います。

伝統をつなぐ製麺技術

こんにちは。中華楼の四代目、素久です。

 

先日におこなったミーティングでは、このホームページを使って、どのように口福から至福へと向かう中華楼にしていくかがポイントになりましたけど、今月以降それを続けることにしました。
なのでスタッフのみなさんに、今月の嬉しかったことや楽しかったことを聞きました。

 

はじめはみんな黙っていたのですが、麺点師の茂木さんが言いました。「あれを言おうか、これを言おうか、たくさんあるんだけど、まとまらない」。するとポツリポツリと話が出てきました。

 

三代目が言いました。「中華楼には創業以来、お客様満足度という考え方がある。いつお越しいただいても120%満足をしていただかなければいけない。普通のお店はだいたい100%を目指す。でもそれではいけないんだ。いつでもお客様が思っている以上の満足をして頂けるようにしないといけない。120%、150%に持っていかないといけない。中華楼がおよそ100年続いてきているというのは、ずっとそれを守り通してこれた証拠だと思う。いつでも120を目指すためには、やっぱり日々の努力は絶対だよね。こんな話をしたときにスタッフがみんなそうだなって思って、がんばるぞっていう一体感が生まれたときに、よしっていうかさ、なんかこう嬉しいよね」

 

店長の久保田さんは言いました。「やっぱり、お食事中やお帰りの時に、ありがとうとか、おいしかったとか言って下さるとすごくうれしい。声が聞こえなくても表情や雰囲気で満足して頂いたことがわかると本当にうれしいですね」

 

料理長の岩井さんが言いました。「うちは麺が自家製麺で、そのことがお客様に伝わると驚いてくれるんです。今は麺点師の茂木さんが製麺しているんですけど、先月から製麺の技術を教えてもらっているんです。中華楼伝統の製麺は本当に難しいです。伝統の継承のむずかしさがわかりました」

 

岩井さんの言葉に、製麺技術の伝統が中華楼の歴史をつないでいるんだと改めて思いました。中華楼の麺の秘密はとても簡単に記せないので、次回に詳しく書きたいと思います。

中華楼の喜びとはいったいなにか?

こんにちは。中華楼の四代目、素久です。前の原稿の続きです。

 

「口福から至福へ」を表現するために、みんなで中華楼にある喜びについて考えてみました。なぜ喜びについて考えるのかというと、お客様に伝えるべきことが何かを考えたとき、それは中華楼のいいところだろうということになり、中華楼のいいところというのをそのまま伝えても何か宣伝臭があるので、僕たちのリアルな感情でいいところを伝えるためにはどうしたらいいのかを考えました。その結果、僕たちひとり一人が感じる喜びは何かを表現していこうと思い至りました。中華楼の美点とか、いいところを言おうとすると、どうしてもコマーシャル的な雰囲気が抜けませんけど「中華楼で感じる喜びは何か?」と問われると、宣伝のコピーというよりは、どこか素の感覚や感情が出てくるような気がするのです。そこで僕たちの喜びは何かを考えました。

 

料理長の岩井さんが言いました。
「いい宴会がおこなわれていると嬉しいよね。本当に盛り上がっている宴会って厨房にいてもその熱気のようなモノが伝わってくるものだから。そして下がってくるお皿を見れば料理を喜んでもらっているかどうかがはっきりわかる。そういう宴会がおこなわれたとき嬉しいね」

 

副調理の富田さんは「一生懸命考えた季節の料理が評判だと嬉しいです」と答えました。

 

麺点師の茂木さんが言いました。
「チーフが言ったように、ホールから『おいしい』とか聞こえてくるとやはりうれしい。そういう声がもっと上がるようにしていきたい。お客様に喜んでもらえることが一番うれしいことだから、いろんな工夫を重ねてもっと喜んで帰ってもらいたい」

 

店長の久保田さんはこう言いました。
「このお店は駅から少し遠いので、それでもわざわざ来てくれるお客様は本当においしいと思ってくださる皆さん。だからお客様の層としてはリピーターが多い。そういう立地的なハンデを背負いながらもわざわざ来てくださるお客様を大切にしたい。だからテーブルに懐かしい顔を見つけるととても嬉しい。ああ、また来てくださったんだなと。だからおなじみさんの好みは憶えてしまう。そうやって次に来たときにそのかたの好みを厨房に伝えて、できた料理を喜んでいただけるとそこにやりがいを感じる」

 

ホール主任の斉籐さんはこんなことを言いました。
「最年少でまだまだ経験が足りないのが心配です。でも、心がけているのは5つのS。Speed、Smart、Smile、Sensitive、そしてSuccess。とにかく速い動作、そして理知的であること、お客様へはスマイル、あらゆる動作とお客様へのサービスは繊細にすること。それらを続けることで最後にはうまくいったという感覚が残り、実際に繁盛すること。だからお客さんがたくさん入っていると嬉しいですね」

 

こうして質問することでスタッフの思いがどんなものかがわかりました。表情を見ればなんとなくはわかることかもしれないけど、言葉にしてもらうことでそれが確認できてよかったと思います。女房のアキも店内のお手伝いをしてくれているのでひとこと言いました。
「口福から至福へという言葉は、お客様のためだけではなく、私たちお店を運営する側のための言葉でもありますね。スタッフとひとつの輪になって至福なサービスを提供することで、私たち自身も幸せになり、ここに集う人みんなが至福にいたるといいですね」

 

アキの言葉に「もっとも」と思ったけど、それは僕が言いたかったな。

スタッフからの意見など

こんにちは。中華楼の四代目、素久です。

  

先日おこなったミーティングは、前にも三代目が書いたとおり、なかなか話が弾みませんでした。ホームページで何を表現したいのか? 何を表現していくべきなのか? そんなことを聞かれても誰も急には答えられません。だけど三代目の檄で火がつきました。

  

「飲食店の五年間生存率は5%に満たない。つまり、たいていの飲食店は五年で潰れる。なぜそうなのか? 飲食店には波がある。いいときもあれば悪いときもある。それはどんな時代でもあったはず。波風に負けずに90年以上中華楼が続いてきたのは、それを跳ね返すパワーがあったから。そのパワーの源泉は、そのときどきで働いていてくれたスタッフに根性があったからとしかいいようがない。本当に駄目なときに何ができるのか? それをその時代時代で言い合い、協力してきたはず。ここにいるみんなは、僕も含めて、中華楼の歴史の登場人物でしかない。その視点を持って欲しい。いままで100年近く続いてきたことに思いを馳せ、この先もこの伝統が続くためにいま私ができることはなにか? そんなことを考えることで後世にいいものをつなげていく。そう考える人が残ることで歴史がつながる。僕もそのパートを演じている。みんなもそう。それをいまどう表現するのか、それを考えていきましょう」

  

するとスタッフから意見が出るようになりました。まず最初に口を開いたくれたのが富田さんでした。富田さんは副調理です。

  

「毎月のおすすめメニューをホームページで流したらどうでしょうか? もしかしたら、来月のおすすめメニューも流したらいいかもしれません」

  

三代目は「それはいいね」と答え、そののちに「過去に人気があったメニューも紹介できたらいいかな」と言いました。

  

すると料理長の岩井さんがこう言いました。

  

「口福から至福へという言葉の意味をよく考えたい。僕たち職人が至福に至ってしまっては何か違うような気がする。職人は常に現状に甘んじることなく、次のステップを探して挑戦していくもの。そういう意味で僕は、至福に至る途中であることを表現していきたい。いつも今出すものがベストではあるけれど、それが最終地点ではないということ。次にお客様が来てくださったら、次の展開がきっとあるということ。急になんでもかんでも変えられるほど甘い仕事はしてないので、変えられる部分はわずかかもしれないが、足元をよく確認して着実に歩を進めていきたい」

  

確かにそうだなと思いました。でも、それってどう表現すればいいのか、そこがわかりませんでした。

  

富田さんが言いました。

  

「月ごとの季節の料理で、いろいろと冒険してみろと料理長からは言われるんですけど、僕の作るメニューはまだまだ当たり外れがあります。すごく注文されるものと、あまり注文されないものがある。そういうことをやりながら勉強していることを伝えられたらいいのかな?」

  

でも、ホームページであまり注文されない料理のことを書くというのはよくないのではないかと思います。それから、よく考えなければならないのは、注文されるされないと、おいしいかどうかは、かならずしも一致しないと言うことです。どんなにおいしい料理でも名前が悪いと注文されなかったりします。とすると、変えるべきは料理ではなく、名前のほうだったりもするのです。そこでいろんなやりとりのあとで、中華楼にある喜びを伝えていったらいいんじゃないかと考えました。

  

この続きは、また次回書きます。

ホームページ開設と当店モットー「口福から至福へ」について

中華楼の四代目である素久です。はじめまして。

 

昨年末に父である三代目から急にホームページを作り直すと言われ、中華楼のモットーを「口福から至福へ」にすると告げられて、ことの展開の速さに驚きました。ところがうちの女房のアキがそれを聞き、「いいじゃない」と言うのです。「中華楼はただ美味しいだけの店じゃないことを多くの人にわかってもらいましょう」と言うのです。「うん」としか言いようがありませんでした。f(^-^;)

 

落ち着いて考えると確かに「口福から至福へ」というモットーは素晴らしいものです。以前から「中華楼を高級店にしないのは、毎日からだにいいものを食べない限り健康にはなれないからだ」と何度も聞かされました。高級薬膳料理店があまり流行らないのはその効果がよくわからないからです。高い料理はなかなか毎日は口にできません。お客様が健康になるようなものを毎日僕たち自身が食べ続け、信頼していただいて、安心して食べていただけるような店にする、それが中華楼の至上命令でした。そのことをきちんと表現しているように思いました。だけど三代目の話によると、ただそれだけでもありません。

 

三代目はときどき驚くようなひらめきを得ることがあるようです。風水のお店を始めるとき、当時は家族がみんな心配したそうですが、いまとなっては正解だったことがよくわかります。

 

ホームページの案が固まっていくにしたがい、たくさんの納得が生まれました。それは先日のスタッフミーティングのときです。三代目がいろいろと説明したのですが、スタッフにはなかなかわかってもらえません。だけどしばらくすると、それぞれがいままでの中華楼に対する思いを話してくれて、「それを伝える道具がホームペーなんだ」とわかってもらえました。そうなんです。何か新しいことをするのではなく、スタッフひとり一人の胸の内にあり、いままであまり言葉にしてこなかったことを、このホームページを使って伝えていけばいいんだとわかってもらえましたし、僕自身そのことが目の前で展開したためによくわかりました。

 

僕たちのホームページの取り組みはまだ始まったばかりです。これからまたどんなことが起きてくるのかよくわかりませんが、きっと僕たちにとって、お客様とつながるために何か大切なことのきっかけが、ここから生まれるような気がします。

 

本当は今回スタッフの意見などをまとめて書くつもりでしたけど、長くなってしまったので、次回そのことについて書くことを約束してキーボードをしまいたいと思います。長い文章を読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

 

なぜ新しくホームページを開設したのか

先日、ホーページ開設のためのスタッフミーティングをおこないました。いままであまりネットとは付き合いのなかったスタッフにいろいろと意見を聞こうと思ったのですが、話のはずまないことにびっくりいたしました。

 

しかし、大正から続く当店が、現代の荒波を乗り越えていくために必要なことであることを理解してもってからは、ポツリポツリと意見が出るようになりました。

 

なぜ私たちのモットーを「口福から至福へ」としたのか、その話をし、それをモットーとするならいままでの伝統に支えられてきた私たちがこの時代に何をしなければならないのか、スタッフなりに考え始めています。そのことについて次回のこの記事から四代目の素久にレポートしてもらい、中華楼の内側ではどんなことが起きているのかをみなさんに知っていただこうと思います。

 

現代の波に乗ったうえで中華楼らしさとは何かを、ここに少しずつ開示できたらと思います。

 

東西ドイツの壁が崩れたとき、それは誰かが無理矢理こじ開けたのではなく、自然と崩れていったと言うことを聞きました。時代は次第に隠蔽されていたものが開き、知られていなかったことが知られていくようになってきています。中華楼も伝統の味を、硬い壁で囲うのではなく、多くの皆さんに立体的に感じ、味わっていただけるよう、このホームページを利用して少しずつ開いていこうと思います。どこまでのことができるのか、今はまだわかりませんが、いままでの伝統とのバランスを考えながら、皆様に愛される中華楼であり続けるため努力していきますので、ご声援のほど、よろしくお願いいたします。